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アリモニー(Alimony)とは?アメリカでの国際離婚経験者が完全解説

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アメリカの離婚制度のアリモニー(Alimony)とは

アリモニー(Alimony)は、日本語では払養料と翻訳されます。アメリカでの離婚においては一般的な制度です。離婚に階して、収入の多い方がもう一方に支払う払養料(生活補助費)です。このアリモニーの概念、算出法、種類について説明します。この制度はアメリカ全土で広く見られますが、ここでは私が住むNew Jerseyを中心に説明します。

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Image by succo via Pixabay

アリモニー(Alimony)の基本概念

アリモニーとは、離婚後に経済的格差を補うため、収入の多い配偶者がもう一方に支援を行う制度です。例えば、一方が専業主婦(夫)としてキャリアを犠牲にして家庭を支えていた場合、離婚後の生活能力が不足しがちです。このため、収入の多い配偶者がそのギャップを埋める経済的支援を行う必要があります。

この考え方は、「キャリアを犠牲にした配偶者への公平な補償」という理念に基づいています。アリモニーは、「女性は結婚すると家庭に入る」ことが一般的であった時代に作られた制度であり、専業主婦が家庭を支える代わりに経済的な自立を手放すという社会構造の中で発展してきました。しかし、共働きが一般化し、男女の役割分担に対する価値観が変化した現代では、この構造も大きく変わりつつあります。こうした変化にともない、アリモニーも「もう一方の経済的自立を一時的にサポートする制度」へと役割がシフトしており、支払い期間に上限が設けられることが一般的となりつつあります。

アリモニー(Alimony)の別名

アリモニーは州や裁判所によって異なる名称で呼ばれることがあります。例えば、“spousal support”(配偶者扶養)や“maintenance”(生活維持費)などが一般的な代替用語です。これらの名称はいずれも同じ概念を指しており、離婚後の経済的サポートを目的としています。

アリモニー(Alimony)の別の側面

アリモニーの建前上の目的は上記のように公平な支援ですが、行政には別の意図も隠されています。

この制度は、貧困やホームレス対策に直接的な予算を割きたくないという行政の怠慢から生まれた側面もあります。つまり、行政は「ホームレスにならないように元配偶者が経済的支援を行ってください」という形で責任を配偶者間に押し付けているのです。

日本の生活保護制度のように税金で直接補助するのではなく、アリモニーを通じてその役割を元配偶者に担わせているという仕組みです。この背景を理解しておくことは非常に重要です。

また、支払者が死亡した場合、アリモニーは中止されますが、その際に行政が代わりに補填する仕組みは用意されていません。これは、制度の背後にある行政の「予算を組みたくない」という姿勢を明確に反映しています。

さらに、アリモニーの金額や支払期間は、受給者が貧困に陥らない最低限に設定されるのが一般的です。過剰に支払わせると支払者自身が貧困に陥り、行政の目的である「自助努力」を妨げる結果になるためです。

アリモニー(Alimony)の算出法

New Jerseyでの金額の算出は収入の差額の25%です。

例えば年収が$100,000と$50,000の夫婦ならば,

(100,000-50,000) x 0.25 = $12,500

月額約$1,000の支払いになります。

税金が約30%ですから、手取りがだいたい同じになるように調整されるというイメージです。

夫婦が似たような収入の場合は、基本的にアリモニーは必要ありません。

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支払い期間の算出

アリモニーの支払い期間は、婚姻期間の長さによって大きく影響を受けます。ここでの婚姻期間とは、「Compliant for Divorce(離婚申立書)」が提出された日までをもって婚姻が継続していたと見なされるのが一般的です。つまり、実際に別居していた期間があっても、申立書を提出するまでは法的に婚姻状態にあると判断されます。

例えば、ニュージャージー州(New Jersey)では、アリモニーの支払い期間の目安は婚姻期間の50〜70%とされています。私のように14年間の婚姻期間がある場合、支払い期間はおおよそ7〜10年となる可能性があります。

一方で、婚姻期間が極めて短い場合には、そもそもアリモニーが認められない、またはごく短期間に限定されるケースもあります。裁判所は婚姻期間に加えて、双方の収入、生活レベル、キャリアへの影響なども総合的に判断します。

ポイントの整理

  • 婚姻期間の起算点:多くの場合、「Compliant for Divorce」の提出日

  • 支払い期間の目安:婚姻期間の50〜70%

  • 短期婚の場合:アリモニーが発生しない可能性もある

また、離婚が視野に入った時点で、相手が異常なほど金銭に執着していたり、アリモニーを元パートナーへの“報復手段”として利用しようとする傾向が見られる場合には、早めに「Compliant for Divorce」を提出することが極めて重要です。婚姻期間の区切りを明確にし、不要な経済的リスクを避けるためにも、タイミングは大きな意味を持ちます。

加えて注意すべき点として、離婚裁判の期間が「アリモニーの支払い期間」に含まれるケースと、「婚姻期間」として加算されるケースがあるということです。

  • たとえば、支払い期間が7年と定められた場合、離婚裁判が4年続いていたのであれば、その4年がすでに支払期間にカウントされ、実際の支払いは残り3年になることがあります。

  • 一方で、裁判中も「実質的に婚姻関係が継続している」とみなされる場合には、その裁判期間が婚姻期間に含まれ、結果としてアリモニー支払い期間自体が長くなる可能性もあります。

つまり、同じ裁判期間であっても、どこにどうカウントされるかによって、支払う期間や金額が大きく変わってくるのです。これはケースバイケースであり、州の法律や判例、裁判官の判断にも左右されるため、慎重な確認が必要です。

なお、アリモニーには複数のタイプがあり、それぞれで支払いの条件や期間が異なります。実際の判断には裁判所の裁量や当事者間の合意内容も影響します。

アリモニー(Alimony)の種類

Pendente lite alimony

"Pendente lite"という言葉は、一時的な仮決めを意味します。このタイプのアリモニーは、離婚裁判が最終的な解決を迎えるまでの間に、裁判所が命じる一時的な支払いです。

例えば、離婚裁判中に収入のある配偶者がもう一方に経済的支援を行わず、生活に困窮する可能性がある場合、裁判所が一定額の支払いを指示します。この支払いの具体的な金額や期間は最終決定の際に再評価されます。

Open durational alimony

このアリモニーは、以前は“permanent alimony”(永続的アリモニー)と呼ばれていました。かつては、婚姻期間が20年以上の場合、配偶者が生涯にわたって支払い続けることが求められていましたが、現在は支払者が定年に達した段階で終了する形に改められました。

しかし、この制度には“法の穴”ともいえる問題点があります。アリモニーは婚姻期間に比例するべきですが、定年後は支払いができなくなるため、婚姻期間が長いにもかかわらず短期間しか支払いが行われないケースがあります。例えば、婚姻期間30年の50歳の人は65歳まで15年間支払い続けますが、婚姻期間40年の60歳の人は定年の65歳までの5年間しか支払わないことになります。このような矛盾は現在も解消されていません。

Limited duration alimony

このタイプは、離婚時に支払い期間をあらかじめ決定するものです。一般的には婚姻期間の50-70%が支払い期間の目安となります。例えば、婚姻期間が10年の場合、支払い期間を5年に設定することが一般的です。

Rehabilitative alimony

経済力の弱い配偶者が自立するための支援として設けられるアリモニーです。たとえば、職業訓練校への学費を負担するなど、配偶者が新たな収入源を得るための具体的なサポートが行われます。この支援は基本的に短期間で終わるよう設計されています。

Reimbursement alimony

婚姻期間中に、配偶者がもう一方の学費やキャリア形成の費用を負担した場合、その費用の払い戻しを求めるためのアリモニーです。このタイプは、学業修了直後や就学中に離婚となった場合に適用されることが多いです。

アリモニーは養育費(Child Support)を決める前に決める

アリモニーは支払者にとって固定費であり、受給者にとっては収入となります。養育費の金額を決定する際には、両者の収入差が重要な要素となるため、まずアリモニーを決定した上で養育費の交渉が始まります。逆に、養育費を先に決定することはありません。

アリモニーの終了

アリモニーは、以下のような場合に途中で終了することがあります。これらの理由は、制度が行政の怠慢による側面を反映していることを物語っています。

1. 死亡

支払者または受給者が死亡した場合、アリモニーは終了します。特に支払者がリタイアまたは定年退職した場合も同様です。

2. 再婚

受給者が再婚し、新しい配偶者から経済的支援を受けるようになった場合、アリモニーは終了します。このため、支払者の弁護士が「再婚によって早期終了が期待できる」とアドバイスすることもあります。

3. 収入の増加

受給者の収入が増加し、支払者と同等の経済力を持つようになった場合、アリモニーは終了可能です。

アリモニーの悪用に注意:モラハラ人間(ナルシシスト)の典型的な手口

アリモニーは本来、経済的に弱い立場に置かれた配偶者の生活を支援するための制度ですが、モラハラ気質のある人間、特にナルシシストタイプは、離婚時にこの制度を**「加害の手段」として悪用する**ケースがあります。

彼らはアリモニーに関する一般的なルールや裁判所の配慮を逆手に取り、自分にとって有利になるよう巧妙に動きます。以下は、実際によく見られる悪用のパターンです:

🔸 1. 意図的に仕事を辞めて収入を下げる

「自分は収入が低い」「無職である」と主張することで、相手からより多くのアリモニーを引き出す狙いです。本来の能力やキャリアがあっても、裁判所が“現在の収入”を基準に判断することを逆利用します。

🔸 2. Compliant for Divorce(離婚申立書)を意図的に受け取らない

申立書の受理が遅れることで、法的な婚姻期間が延びるため、結果として相手に対するアリモニー支払い期間を長引かせることができます。受け取りを引き延ばしたり、受け取らないフリをすることで、相手に経済的・精神的負担を与える目的があります。

🔸 3. 病気や精神疾患を理由に「働けない」と主張

「医師の診断書」を盾にして、「就労が不可能」と裁判所に訴えることで、長期間のアリモニー支払いを要求するパターンです。実際には働ける能力があるにもかかわらず、病気を理由に“経済的被害者”の立場を装います。

アメリカの離婚制度のアリモニー(Alimony) まとめ

アリモニーは、アメリカの離婚において一般的な制度です。離婚後、収入の多い配偶者がもう一方に扶養料を支払うこの仕組みは、一方のキャリアを犠牲にした配偶者への補償という建前があります。しかし、その背景には行政の財政負担を軽減する意図も存在します。

アリモニーの金額は手取りが均等になるよう調整され、支払い期間は婚姻期間の50-70%程度です。養育費の決定に先立ち、まずアリモニーが決定される必要があります。

アリモニーは、支払者や受給者の死亡、受給者の再婚、または受給者の収入増加により途中で終了する可能性があります。