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片親疎外(片親疎外症候群)の原因と動機とは?アメリカ裁判経験者が徹底解説

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はじめに

私は片親疎外の標的親(父親)の立場でアメリカで裁判を戦った経験を持ちます。その過程で片親疎外について情報を集め学んできました。片親疎外は元パートナーへの精神的虐待であり、子どもへの児童虐待です。残念ながら、共同親権のアメリカでも、司法の機能不全により多くの断絶親子がいます。この酷い虐待行為に対するリテラシーの向上を目的に本記事では片親疎外の原因と動機を紹介します。片親疎外の原因は、疎外を行う親の持つ「境界性人格障害、自己愛性人格障害、妄想性人格障害、反社会性人格障害、精神病質者(サイコパス)」です。その動機は、遺棄への恐怖と元パートナーへのリベンジです。

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Image by Lars_Nissen via Pixabay

片親疎外とは?

片親引き離し症候群ということもあります。一方の親が、あらゆる手段を用いて、元パートナー(もう一方の子供の親)と子供の接触を妨害したり、子供を洗脳し拒絶するように仕向けます。片親疎外とは何かについての深堀記事はこちらです。

片親疎外の原因と動機

片親疎外の程度は、軽度、中度、重度の三段階に分けられます。ひどい疎外をする疎外親は、境界性人格障害、自己愛性人格障害、妄想性人格障害、反社会性人格障害、精神病質者(サイコパス)などの人格障害を持つことが知られています。後者の人格障害や精神疾患を持つ疎外親の方が疎外の悪性度が増します。それぞれの人格障害の特徴と疎外を行う動機について見ていきます。

境界性人格障害

境界性人格障害(Borderline Personality Disorder, BPD)を持つ疎外親は、感情の不安定さと対人関係の混乱が特徴です。このタイプの疎外親は、過去のトラウマや自己価値感の低さ(自己無価値感)から、子どもに対して過剰な依存やコントロール欲を抱く傾向があります。特に、子どもが相手の味方になるのではないか、いつか自分を見捨てるのではないかという「遺棄への恐怖」が、疎外行為の強い動機となります。この恐怖心から、元配偶者に対する否定的な情報を子どもに吹き込み、相手への信頼や好意を削ぐことで、自分が子どもにとって唯一の存在であることを維持しようとします。例えば、「お父さん(お母さん)はあなたを捨てたのよ」といった誤情報を繰り返し伝えることで、子どもの心に元配偶者への不信感を植え付ける行動が典型的です。結果として、子どもは疎外親の感情的不安定さに巻き込まれ、心理的な負担を強いられることになります。

自己愛性人格障害

自己愛性人格障害(Narcissistic Personality Disorder, NPD)を持つ疎外親は、極端に自己中心的で、自分の価値を他者からの承認や称賛で満たそうとします。元配偶者に対する敗北感や嫉妬心から、子どもを自分の側に引き寄せ、元配偶者を孤立させることで優越感を得ようとします。このタイプの疎外親の主な動機は元パートナーへのリベンジです。子どもとの接触を妨害するだけでなく、子どもを洗脳し、積極的に標的親を拒絶・攻撃させる行為も見られます。同時に、子どもに自分の味方をさせることで自身の正当性を示そうとする動機も存在します。具体的には、子どもが選んだのは自分である、子どもが拒絶し嫌っているのは相手の方であると示すことで、自分の行動や主張が正しいと主張しようとするのです。この場合、疎外行為は非常に巧妙で、表面上は「子どものため」を装うことが多いです。

妄想性人格障害

妄想性人格障害(Paranoid Personality Disorder)は、他者への極端な不信感や疑念が特徴です。このタイプの疎外親は、元配偶者が子どもを傷つける可能性があるという根拠のない妄想を抱き、それを信じ込んで行動します。疎外の動機は、「子どもを守る」という名目で非現実的な危険を過剰に信じることにあります。その結果、元配偶者との接触を制限し、子どもに対して相手の悪口を繰り返すなど、過剰な干渉が行われます。

反社会性人格障害とサイコパス

反社会性人格障害(Antisocial Personality Disorder)やサイコパスの特徴を持つ疎外親は、他者への共感能力が低く、目的達成のためには手段を選びません。このタイプの親は、元配偶者を完全に排除し、自分の思い通りに事態を操作することを目指します。反社会性人格障害やサイコパスの疎外親においても、元配偶者へのリベンジが主要な動機とされています。自らの利益を追求しつつ、子どもを利用して元配偶者に最大限の心理的ダメージを与える行為が目立ちます。時には、子どもの感情や健康を顧みない冷酷な行動を取ることもあります。

「嫉妬」も片親疎外動機の一つ

これは、片親疎外を経験した子ども自身が指摘した興味深い視点です。それは、「嫉妬」が片親疎外の強い動機となり得るという点です。

「私はもう二度と元パートナーから愛されることはない。しかし、子どもはこれからも変わらず愛され続ける。それが許せない。」

この心理は学術的には十分に研究されていないかもしれませんが、片親疎外の加害者に多い人格障害の特性を考えると、非常に本質的な指摘であると言えます。これは単なる一時的な嫉妬ではなく、人格障害特有の歪んだ認知と深い自己無価値感が絡み合った結果として生じるものです。

疎外親は、「自分は愛される価値のない存在である」と確信している一方で、子どもが標的親から無条件に愛されることに耐えられません。「自分が決して得られない愛情を、子どもだけが受け取る」という現実が、強烈な嫉妬心を引き起こします。この感情がエスカレートすると、子どもと標的親の絆を断ち切ることで、心理的な均衡を保とうとするのです。

特に自己愛性人格障害(NPD)を持つ疎外親において、この心理メカニズムは顕著かもしれません。自己愛性人格障害者は、自分の優位性を脅かされることに強い拒否反応を示します。「子どもが元配偶者に愛されることで、自分の存在が相対的に価値を失う」と感じると、その不安や劣等感を解消するために、標的親との関係を破壊しようとする可能性があります。

人格障害別の発生頻度と片親疎外への影響

人格障害の種類ごとに発生頻度を考えると、片親疎外の加害者として特に目立つのは境界性人格障害と自己愛性人格障害の親です。この2つの人格障害は、他の人格障害と比較して一般的に診断される頻度が高く、片親疎外の場面でも頻繁に見られる傾向があります。一方で、妄想性人格障害の発生頻度は他の人格障害に比べて低く、片親疎外の加害者として関与するケースも相対的に少ないと考えられます。しかし、このタイプの親が関与する場合、その行動は極端であり、子どもに大きな心理的負担を与える可能性があります。反社会性人格障害(Antisocial Personality Disorder)やサイコパスに該当する親はさらに稀です。これらのケースでは、そもそも結婚や子を持つ状況に至ること自体が少ないため、片親疎外の加害者となる割合は極めて低いと推測されます。ただし、もし該当する場合、疎外行為は冷酷かつ計画的であり、子どもや元配偶者に対して深刻かつ長期的なダメージを与えることがあります。

片親疎外の主な原因は自己愛性人格(パーソナリティ)障害

境界性人格障害者が行う片親疎外は他の人格障害者と比べると軽度であるとされています。人格障害の存在頻度をさらに考慮すると、悪性度の高い片親疎外の多くは自己愛性人格障害が原因であり、元パートナーへのリベンジが主な動機であると結論付けられます。しかし、これらの人格障害は明確に区別されるものではなく、しばしば複数の特徴が混在することが一般的です。例えば、自己愛性人格障害の特徴を持ちながら、サイコパスのように冷酷で計画的な行動を取る疎外親も存在します。このような複雑な特徴の組み合わせが、子どもや元配偶者に与える影響を一層深刻なものにしています。

片親疎外(片親疎外症候群)の原因と動機 まとめ

片親疎外は、さまざまな人格障害を持つ親によって引き起こされる深刻な問題です。それぞれの人格障害には特有の特徴や動機があり、境界性人格障害では遺棄への恐怖、自己愛性人格障害では元パートナーへのリベンジ、妄想性人格障害では非現実的な危険への過剰反応、反社会性人格障害やサイコパスでは冷酷かつ計画的な操作が見られます。また、学術的な研究はあまりされていませんが「嫉妬」も片親疎外の強い動機となる可能性があります。人格障害の存在頻度と片親疎外の程度を考え合わせると、片親疎外の主な原因は、自己愛性人格障害であり、主な動機は元パートナーへのリベンジとなります。

参考図書: You're not crazy,  Divorce Poison