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アメリカ離婚における財産分与:持ち家の扱いとその決定要素 ―アメリカでの国際離婚経験者が解説―

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持ち家はどちらが取るか?

アメリカで離婚する際、夫婦が共有する持ち家は、どちらか一方が所有権を獲得することが一般的です。このプロセスは財産分与の一環として進められますが、日本の感覚とは異なる点が多くあります。

特に、アメリカ(少なくともニュージャージー州)では、裁判所が家を獲得する配偶者のローン返済能力を必ずしも考慮しないという点は注目に値します。これは日本人にとって意外に映るかもしれません。日本では通常、ローン返済能力がある方が家を取得するのが合理的と考えられるからです。

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Image by David Mark via Pixabay

持ち家の獲得が経済的に与える影響

どちらの配偶者が住宅ローンの残った家の所有権を獲得するかは、ミドルクラスの離婚を迎える夫婦にとって大きな問題です。

特に、ニュージャージー州、ニューヨーク州、カリフォルニア州のように住宅価格が高く、アパートの家賃も高額な地域では、さらに深刻な問題となります。

資産分配の過程では、単純に総資産を均等に分けることが重視されますが、これには重要な経済的側面が見過ごされがちです。家を獲得した配偶者は、そのまま住み続けることで、住宅ローンの元本返済が進むにつれて資産を構築できます。一方で、家を獲得できなかった配偶者は、一定期間賃貸住宅に移らざるを得ず、高額な家賃を支払い続けながら、新居購入のための頭金を準備しなければなりません。

さらに、新たに住宅を購入する際には、頭金以外にもクロージング費用や新しい家電や家具の購入費用など、追加のコストが発生します。しかし、こうした一時的な賃貸住まいによる経済的なデメリットや、将来の住宅購入時にかかるコストは、資産分配の際に考慮されることはほとんどありません。

真に公平な分配を目指すならば、家を譲る側の経済的負担やコストを考慮し、その分を他の預貯金や資産で補填するべきです。しかし、実際にはこのような配慮が行われることは一般的ではありません。

裁判所は家の売却を命じる場合がある

離婚後、どちらの配偶者も住宅ローンを支払う能力がないと判断された場合、裁判所は家の売却を命じることがあります。この際、売却金は公平に分配され、両者の経済的な再出発を支援することを目的としています。

住居の獲得にローンの支払い能力は問われない

驚くべきことに、ニュージャージー州では、家を獲得する配偶者の住宅ローンの支払い能力が問われることはありません。どちらもが払えない場合は、売却を命じるのに不思議なことです。

「とにかく財産をきっちり半分に分けることが重要だ」というのが基本方針となっており、その後に家を失ったとしても、それは資産分配が完了した後の問題として裁判所は関与しません。家を失うことは、いわば所有者自身の責任だというのが、アメリカ的な考え方です。

例えば、住宅ローンの支払い能力がない配偶者が家を所有した場合、いずれその家を失う可能性が高いことは明らかです。そのため、支払い能力のある方が家を所有する方が現実的ではないかと考えるのが一般的な感覚でしょう。しかし、少なくともニュージャージー州においては、この考え方は通用しないのです。

弁護士の回答

私は以下のような質問を弁護士にしました:

  • New Jerseyでは、現在の家のローンもアパートの家賃も大差ない。家を売却して双方がアパートに住む理由はなく、一方だけでも家を所持して資産を構築すべきではないか?

  • 妻がこのまま働かない場合、私が支払うAlimonyや養育費だけでは家のローンは払えないのでは?

  • 家のローンが払えず経済的に困窮すると、子供たちにも悪影響が出るのでは?

  • 私はローンの支払い能力があるので、妻が家を維持できる経済力がない場合、私が家を所有することを裁判所に認めさせることは可能か?

このような質問を投げかけたところ、弁護士の答えは以下のようなものでした:

"家の所有権を獲得する配偶者が、その家を今後も維持する能力を持っているかどうかを裁判所は全く気にしません。あなたのような現実的な考え方は裁判所の判断基準にはなりません。裁判所はただひたすら資産を半分に分けることに集中しています。"

この回答から、アメリカの裁判所の判断が、必ずしも実務的または経済的な持続可能性を優先するわけではないことが明確になりました。

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銀行のスタンスは裁判所とは異なる

その後、さまざまな情報を調べた結果、裁判所の判断とは異なり、債権者である銀行は異なるアプローチを取ることが分かりました。

銀行は、ローンの債務者が収入のある配偶者から収入のない配偶者へ移行することを認めません。これは、ローンの返済を確実にするためには当然の姿勢です。

裁判所が収入のない配偶者に家の所有権を与えた場合、銀行は将来的な問題を回避するために、家の売却を要求する可能性があります。また、最悪の場合、貸し剥がしのような措置が取られることも考えられます。

このように、銀行の立場は経済的な現実に即したものであり、裁判所の判断が必ずしもそれと一致するわけではありません。

関連記事: アメリカではより多くのアリモニーを得ようと自らの収入を意図的に下げる人がいます。その対策にこの持ち家の分配ルールが役立つことがあります。

アメリカの離婚において、裁判所は住居の獲得にローンの返済能力を考慮しないが、銀行はこれを重要視する

アメリカでの離婚における持ち家の扱いは、日本とは異なる価値観や法律に基づいています。裁判所の判断基準は、財産の公平な分配を重視しますが、銀行はローンの返済能力を強く求めるため、両者のスタンスには大きな違いがあります。この違いを理解し、それを効果的に活用することが、最良の結果を導く鍵となります。離婚という厳しい状況の中で、法的な知識や制度の理解を深めることは、自分や家族の未来を守るための大きな助けとなるでしょう。持ち家に関する問題は複雑で感情的な側面も含まれますが、冷静に対処するための参考になれば幸いです。